今週のアップデート — 活断層と原発(2013年2月4日)
今週のアップデート
1)原子力規制委員会が原発の新安全設置基準を設けるなど制度の再構築を行っています。福島原発事故が起こってしまった日本で原発の安全性を高める活動は評価されるものの、活断層だけを注視する規制の強化が検討されています。こうした部分だけに注目する取り組みは妥当なのでしょうか。
元経産官僚としてエネルギー政策にかかわった石川和男さんにインタビューを行いました。石川さんは活断層だけに注目した規制強化に疑問を示し、総合的な損得を考えて原発とエネルギーの未来を考える事を訴えています。
「原発停止継続、日本経済に打撃 — 活断層に偏重した安全規制は滑稽」
2)原子力関連企業の技術者OBから活断層問題をめぐる投稿がありました。活断層の判断の妥当性について疑問を示すもので、それを紹介します。GEPRは一般からの投稿を受け付けています。
「活断層問題だけで安全は保たれるのか? —「新安全設計基準」の審議に思う」
3)「再生可能エネルギー振興で増える電力料金の負担–ドイツの事例から」
提携する国際環境経済研究所(IEEI)の竹内純子主席研究員のコラムを紹介します。低所得者への電気料金の逆進性について、解説しています。
今週のリンク
1)「Energy Secretary Steven Chu resigns; led green energy push」。(スティーブン・チューエネルギー長官辞任へ、グリーンエネルギーを推進)2月2日AP通信。
米オバマ政権でエネルギー庁長官を務めたスティーブン・チュー氏が、辞職の意向を示しました。米国のエネルギー庁は、エネルギー振興、原子力など技術支援を担当します。ノーベル賞受賞の学者長官として期待されました。エネルギー研究の支援の拡大は評価を得ました。一方で、再生可能エネルギーの振興策は効果が乏しかったとの批判も議会から受けた長官です。現時点で後任は未定です。
2)「発電用軽水型原子炉施設の地震及び津波に関わる新安全設計基準(骨子素案)」原子力規制委員会が1月29日に公表した素案です。福島事故の影響を踏まえて、活断層を含めた耐震基準をめぐる規制を強化しています。
3)「【地震・津波新安全基準】「耐震設計で活断層との共生は可能」 原子力規制委の基準に懐疑的見方も」産経Biz1月29日記事。規制委員会の新基準をめぐって、活断層を中心に解説をしています。
4)「日本原電は行政訴訟を起こせ」。アゴラ研究所の池田信夫所長のアゴラ掲載記事。事業者が監督官庁を訴える新しい取り組みを日本でも初めてもいいのではないかという主張です。
5)「規制庁幹部、断層報告書案を漏洩 日本原電に — 審議官を更迭、訓告処分」。日本経済新聞2月2日記事。公開前の資料を原電に提供した幹部がいました。業者との関係は慎重であるべきですが、対話もない規制庁の現状も問題とするべきでしょう。
6)「発送電分離に協力迫る 経産省、電事連会長と会談」日本経済新聞1月31日記事。経産省と電力会社首脳らとの会談は、福島原発事故後に行われてきませんでした。そこで、経産省側は発送電分離への協力を求める一方、電気事業者側は原発再稼動などの問題に意見を表明しました。
7)「US senators unveil bill to allow LNG exports to NATO allies, Japan」(米超党派上院議員、NATOと日本へのLNG輸出法案を提出)Platts1月31日記事。同社は米国のエネルギー情報の専門通信社。米国はシェールガスの増産が続いています。これまで米国は原則として国内消費に限定していましたが、それを同盟国に売ろうという提案です。法案の先行きは不明ですが、日本のエネルギーの安定供給を考える際に注目すべき動きです。

関連記事
-
原子力発電は「トイレの無いマンション」と言われている。核分裂で発生する放射性廃棄物の処分場所が決まっていないためだ。時間が経てば発生する放射線量が減衰するが、土壌と同じ放射線量まで減衰するには10万年という年月がかかる。
-
関西電力の高浜原子力発電所3、4号機(福井県高浜町)の運転差し止めを滋賀県の住民29人が求めた仮処分申請で、大津地裁(山本善彦裁判長)は3月9日に運転差し止めを命じる決定をした。関電は10日午前に3号機の原子炉を停止させた。稼働中の原発が司法判断によって停止するのは初めてだ。何が裁判で問題になったのか。
-
米国のトランプ次期大統領が閣僚候補者を次々に指名している。エネルギーと環境に関して、その方向性ははっきりしている。 以下の、バーガム、ライト、ゼルディンの3氏は全員、石油・ガス・石炭などの化石燃料の開発・利用に関する規制
-
日本政府はグリーントランスフォーメーション(GX)の一環として送電線の増強をしようとしている。再エネ大量導入で発電ピーク時に余った電力を他の地域に融通して利用しようという方針だ。 政府資料:広域系統長期方針(広域連系系統
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 IPCC報告には地球の平均気温がぐんぐん上昇しているとい
-
元静岡大学工学部化学バイオ工学科 松田 智 前回書ききれなかった論点を補足したい。現在の日本政府による水素政策の概要は、今年3月に資源エネルギー庁が発表した「今後の水素政策の課題と対応の方向性 中間整理(案)」という資料
-
エネルギー問題では、福島事故の影響で、原発に賛成か反対かという論点ばかりが議論されがちです。しかし私たちが考えなければならない問題は数多くあります。原子力規制庁、外部コストと呼ばれる社会影響、代替策についての論考を紹介します。
-
このたび「エネルギードミナンス:強く豊かな日本のためのエネルギー政策(非政府の有志による第 7次エネルギー基本計画)」を発表しました(報告書全文、150ページ)。 杉山大志と野村浩二が全体を編集し、岡芳明、岡野邦彦、加藤
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間