中国製メガソーラーは製造時のCO2回収に10年かかる

2022年11月28日 07:00
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

Michael Piepgras/iStock

以前、カリフォルニアで設置される太陽光パネルは、石炭火力が発電の主力の中国で製造しているので、10年使わないとCO2削減にならない、という記事を書いた。

今回は、中国で製造した太陽光パネルが日本に設置されるとどうなるか、計算した結果を紹介しよう。(詳しい計算は、別途研究ノートにまとめたので参照されたい。)

表1 メガワットあたりのCO2収支計算

以下、太陽光発電容量1メガワットあたりで全て計算する。

  • まず住宅用の場合、製造時に2190トンのCO2が発生する。これを使用することで、年間531トンのCO2が削減できる。すると4.1年で製造時のCO2が回収できることになる。なおここで削減できる電力のCO2排出係数は2020年の値である0.441kg-CO2/kWhを用いた。
  • 次にメガソーラーの場合、製造時に3070トンのCO2が発生する。これを使用することで、年間662トンのCO2が削減できる。他方でメガソーラーは森林破壊をすることがある。ここでは1メガワットで2ヘクタールの森林が破壊されると考える。森林は1ヘクタール当たり302トンのCO2を蓄えており、毎年8.8トンのCO2を吸収するもの。製造時のCO2と森林破壊の両者を考慮すると、建設時のCO2を回収するのに5.7年かかる計算になる。
  • 以上で電力排出係数として2020年の値を用いてきた。だが2030年の電源構成ではどうなるか。政府の計画値である0. 250kg-CO2/kWhを用いて計算すると、CO2の回収にかかる年数は、住宅用で7.3年、メガソーラーでは10.1年になる

つまり、中国製のソーラーパネルを使用すると(いまの世界のソーラーパネルのほとんどは中国製だ)、太陽光発電の建設時までのCO2排出量は多く、太陽光発電によってCO2を削減して取り返すためには、住宅用で7年、メガソーラーでは10年もかかるという計算結果になった。

以上の計算は概算であり、詰めるべきところは沢山ある。だがはっきり言えることは、パネル製造や森林破壊などによって建設時までに発生するCO2排出量をきちんと予測し、明示すべきだ、ということだ。

  • 住宅用であれば、設置する事業者がその責を負うべきである。
  • メガソーラーであれば、個々の発電所について、事業者が義務を負うべきである。

その上で、事業の妥当性を検討すべきだ。

もちろん、政府の太陽光発電支援策についても、建設時のCO2排出量を考慮して、今一度見直すべきである。

キヤノングローバル戦略研究所_杉山 大志』のチャンネル登録をお願いします。

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • 小泉環境大臣がベトナムで建設予定の石炭火力発電所ブンアン2について日本が融資を検討していることにつき、「日本がお金を出しているのに、プラントを作るのは中国や米国の企業であるのはおかしい」と異論を提起している。 小泉環境相
  • アメリカ共和党の大会が開かれ、トランプを大統領に指名するとともに綱領を採択した。トランプ暗殺未遂事件で彼の支持率は上がり、共和党の結束も強まった。彼が大統領に再選されることはほぼ確実だから、これは来年以降のアメリカの政策
  • 日本の温室効果ガス排出量が増加している。環境省が4月14日に発表した確報値では、2013 年度の我が国の温室効果ガスの総排出量は、14 億 800 万トン(CO2換算)となり、前年度比+1.2%、2005年度比+0.8%、1990年度比では+10.8%となる。1990年度以降で最多だった2007年度(14億1200万トン)に次ぐ、過去2番目の排出量とあって報道機関の多くがこのニュースを報じた。しかし問題の本質に正面から向き合う記事は殆ど見られない。
  • 気象庁は毎年気候変動監視レポート(以下、レポート)を出している。これまでは冊子がメインだったが今年からウェブ版のみとなった。 https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/monitor/inde
  • アメリカは現実路線で石炭火力シフト、日本は脳天気に再エネ重視 アメリカの研究機関、IER(エネルギー調査研究所)の記事「石炭はエネルギー需要を満たすには重要である」によると、「ドイツでは5兆ドル(750兆円)を費やし、電
  • 東北電力原町火力発電所(福島県南相馬市)を訪れたのは、奇しくも東日本大震災からちょうど2年経った3月12日であった。前泊した仙台市から車で約2時間。車窓から見て取れるのはわずかではあるが、津波の爪痕が残る家屋や稲作を始められない田んぼなど、震災からの復興がまだ道半ばであることが感じられ、申し訳なさとやるせなさに襲われる。
  • 新ローマ教皇選挙(コンクラーベ)のニュースが盛り上がる中、4月30日付の「現代ビジネス」に川口マーン恵美さんが寄稿された記事「ローマ教皇死去のウラで~いまドイツで起きている『キリスト教の崩壊』と『西洋の敗北』」を読んでい
  • テスラが新車を発表し、電気自動車(EV)が関心を集めている。フランスのマクロン大統領は「2040年までにガソリン・ディーゼル車の販売を停止する」という目標を発表した。つまり自動車はEVとハイブリッド車に限るということだが

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑