IPCC報告の論点51:気候変動で食料生産が減っている?

2022年04月19日 07:00
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キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

前回に続いて、環境影響(impact)を取り扱っている第2部会報告を読む。

leolintang/iStock

今回のテーマは食料生産。以前、要約において1つだけ観測の統計があったことを書いた。

だが、本文をいくら読み進めても、ナマの観測の統計がとにかく示さていない。

唯一、漁獲量については下図があった。(図5.13)

これを見ると、漁獲量はどんどん増えている!

ところがこの説明をする本文では「気候変動によって海洋の食料生産が悪影響を受けている」となっている。例えば以下の箇所:

これを読むと海洋の養殖は気候変動で悪影響を受けている、と書いてある。しかし、上図を見ると、海洋の養殖の漁獲量(Aquaculture productionの Marine、図中の薄い茶色の部分)は「うなぎ上り」だ。

筆者は3000ページを超える本文を全部眺めたが、あらゆる農作物生産について、「気候変動が悪影響を及ぼしている」という記述が無数にある。

だが、下記のような生産量の統計の図は、ついに報告のどこにも見当たらなかった。

技術進歩のペースが上回り、世界の食糧生産は増加の一途である。気候変動による陰りなど見られない。

図は拙著「地球温暖化のファクトフルネス」より

まず観測・統計データを確認するという基本が、なぜ守られていないのだろうか。

1つの報告書が出たということは、議論の終わりではなく、始まりに過ぎない。次回以降も、あれこれ論点を取り上げてゆこう。

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IPCC報告の論点㊳:ハリケーンと台風は逆・激甚化
IPCC報告の論点㊴:大雨はむしろ減っているのではないか
IPCC報告の論点㊵:温暖化した地球の風景も悪くない
IPCC報告の論点㊶:CO2濃度は昔はもっと高かった
IPCC報告の論点㊷:メタンによる温暖化はもう飽和状態
IPCC報告の論点㊸:CO2ゼロは不要。半減で温暖化は止まる
IPCC報告の論点㊹:アメダスで温暖化影響など分からない
IPCC報告の論点㊺:温暖化予測の捏造方法の解説
IPCC報告の論点㊻:日本の大雨は増えているか検定
IPCC報告の論点㊼:縄文時代には氷河が後退していた
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IPCC報告の論点㊾:要約にあった唯一のナマの観測の統計がこれ
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