脱炭素のためなら子供たちが強制労働に加担してもよいのか

2022年04月17日 06:40

Jerzy Niezabitowski/iStock

横浜市が市内の小中学校500校のうち65校の屋根にPPAで太陽光発電設備を設置するという報道を見ました。記事からは分かりませんが、この太陽光パネルの製造国はどこなのでしょう。

太陽光発電、初期費用なしPPAが設置促す 補助も充実(2022年4月13日付日本経済新聞)

PPAは初期投資が不要であることに加えて、多くの場合発電した電気の価格が従来の電気料金よりも安く設定されます。従来の電気料金よりも単価が高いのであれば、設備投資で太陽光パネルを買い取って発電した分の電気をゼロ円で利用した方が電気料金の削減につながるためです。従って、発電効率が同等であればPPA事業者は設備費と電気代を抑えるために安価な中国製のパネルを設置すると思われます。

SDGsを学んでいる小学生に対して、自治体や学校はこの太陽光パネルが中国製の場合強制労働によってつくられた可能性があって、そのパネルから発電された電気を利用して照明やパソコンを使うことになると説明ができるのでしょうか。

また、高学年であればインターネットで先進国が新疆ウイグル自治区由来の太陽光パネル、農作物、衣料品の使用禁止を進めていることを知る可能性が十分にありますが、校舎の屋根の太陽光パネルについて質問されたらどう答えるのでしょうか。筆者はとても説明できる自信がありません。強制労働の疑いがある太陽光パネルを利用するのは誰一人取り残さない社会をめざすSDGsとは真逆の行為になってしまいます。

脱炭素のためなら子供たちが強制労働に加担してもよいのでしょうか。将来、この子たちがこうした背景を知った場合にどのように感じるのか、とても心配です。

■

『SDGsの不都合な真実-「脱炭素」が世界を救うの大嘘-』(宝島社)

This page as PDF

関連記事

  • 福島第1原発のALPS処理水タンク(経済産業省・資源エネルギー庁サイトより:編集部)
    海洋放出を前面に押す小委員会報告と政府の苦悩 原発事故から9年目を迎える。廃炉事業の安全・円滑な遂行の大きな妨害要因である処理水問題の早期解決の重要性は、国際原子力機関(IAEA)の現地調査団などにより早くから指摘されて
  • 9月5日付の本コラムで、私はポツダム研究所の研究者がネイチャーに掲載した論文の欠陥騒ぎについて書いた。 気候科学の嘘が大きすぎてネイチャーは潰せない 気温だけで経済成長を説明しようとする無理筋のモデルで、「気候変動影響に
  • 23年間の大きな変化 6月17日、第52回G7エヴィアンサミットが閉幕した。 前回、エヴィアンでサミットが開催された2003年はロシアを含めたG8の時代であり、中国はまだ「世界の工場」として台頭途上であった。原油価格は上
  • 1.2050年カーボンニュートラル及び2030年度削減目標の実現に向け、国民・消費者の行動変容、ライフスタイル変革を強力に後押しするため、新たに「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」(仮称)を開始します。
  • IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 IPCC報告には地球の平均気温がぐんぐん上昇しているとい
  • 資産運用会社の経営者でありながら、原子力行政の「非科学的」「不公正」な状況を批判してきた森本紀行HCアセットマネジメント社長に寄稿をいただきました。原子力規制委員会は、危険性の許容範囲の議論をするのではなく、不可能な「絶対安全」を事業者に求める行政を行っています。そして政治がこの暴走を放置しています。この現状を考える材料として、この論考は公平かつ適切な論点を提供しています。
  • 放射線の線量データが公表されるようになったことは良いことだが、ほとんどの場合、その日の線量しか表示しない。データの価値が半減している。本来、データは2つの意味を持っている。一つはその日の放射線量がどうなのかということ。2
  • (前回:再生可能エネルギーの出力制御はなぜ必要か②) 送電線を増強すれば再生可能エネルギーを拡大できるのか 「同時同量」という言葉は一般にも定着していると思うが、これはコンマ何秒から年単位までのあらゆる時間軸で発電量と需

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑