今週のアップデート — 再エネ補助は2800億円の巨額(2013年6月17日)
今週のアップデート
1)再生可能エネルギーの国補助金、追加費用年2800億円の巨額に — 負担は正当か?
電力中央研究所の朝野賢司主任研究員の寄稿です。福島原発事故後の再生可能エネルギーの支援の追加費用総額は、年2800億円の巨額になりました。再エネの支援対策である固定価格買取制度(FIT)が始まったためです。この補助総額は10年の5倍ですが、再エネの導入量は倍増しただけです。この負担が正当なものか、検証が必要です。
2)温暖化・環境問題、中国だけが悪いのか? — 生産肩代わりの検証を
アゴラ研究所フェローで、環境ジャーナリストの石井孝明の寄稿です。温暖化問題で中国の環境破壊が懸念されます。ところが中国は先進国が必要とする財の生産で、温室効果ガスの排出を増やしている面があります。こうした現実を見据えた方がいいという指摘です。
3)電力カラーリングへの期待と誤解(上)— 誰が発電したか知る方法
電力カラーリングへの期待と誤解(下)— 乗り越えなければいけない技術的課題
新しい考え、電力カラーリングという話を紹介しています。提携する国際環境経済研究所(IEEI)の論考です。再生可能エネルギーでの発電、そして原子力の発電を外すために、発電先を明確にする手法です。しかし専門家のこの説明では大変難しそうです。
今週のリンク
1)「原発再稼働ゼロなら、電気代50%値上げも」安念委員長に聞く、再稼働の法的根拠と電気代値上げの行方
JBPRESS6月12日記事。経済産業省で電気料金の値上げを審査している電気料金審査専門委員会の安念潤司委員長(中央大学法科大学院教授)のインタビュー記事です。原発の再稼動が法に規定されず、このままでは電気代の上昇が起こることを懸念しています。総務省家計調査では、日本の世帯の電気代平均は年20−30万円です。これが10万円から15万円増えるでしょう。
2)平成24年度 エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書)
資源エネルギー庁6月14日発表。毎年公表されるものですが、民主党政権が打ち出した「原発ゼロ」政策には触れず、政権交代によって安倍晋三首相が見直しを支持したことを詳述。この文章からは政府の政策転換がうかがえます。
ニューヨークタイムズ、7月12日の映画評。タイトルは「A Rebel Filmmaker Tilts Conservative」。GEPRで紹介した映画「パンドラの約束」が米国で公開されています。原発に懐疑的なニューヨークタイムズをはじめ、各メディアでは好意的な論評が提供されています。(GEPR記事「原子力への恐怖は正しいのか?–映画「パンドラの約束」」
WEDGEInfinity4月25日記事。今回寄稿をいただいた電力中央研究所の朝野賢司主任研究員の論考で、バブルを止める対応策を提言しています。
5)貿易に体化したCO2排出量‐日本・中国・米国・英国の国際比較
今回紹介のコラムで紹介した、温室効果ガスと貿易の関係をめぐる電中研の研究。こうした環境汚染の移転の研究は、世界であまり進んでいません。国境をまたいだ環境規制のために、貿易と環境の関係を検証することが必要です。

関連記事
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 前回の論点㉒に続いて「政策決定者向け要約」を読む。 冒頭
-
2021年8月に出たIPCCの報告の要約に下図がある。過去の地球の平均気温と大気中のCO2濃度を比較したものだ。これを見ると、CO2濃度の高い時期(Early Eocene)に、気温が大変に高くなっているように見える。
-
東京電力の福島復興本社が本年1月1日に設立された。ようやく福島原発事故の後始末に、東電自らが立ち上がった感があるが、あの事故から2年近くも経った後での体制強化であり、事故当事者の動きとしては、あまりに遅いようにも映る。
-
バイデン政権で気候変動特使になったジョン・ケリーが米国CBSのインタビューに答えて、先週全米を襲った寒波も地球温暖化のせいだ、と言った。「そんなバカな」という訳で、共和党系ウェブサイトであるブライトバートでバズっている。
-
日米原子力協定が自動延長されたが、「プルトニウムを削減する」という日本政府の目標は達成できる見通しが立たない。青森県六ヶ所村の再処理工場で生産されるプルトニウムは年間最大8トン。プルサーマル原子炉で消費できるのは年間5ト
-
苦しむドイツ ウクライナ紛争に伴ったロシア制裁と、その報復とみられるロシアによる欧州への天然ガス供給の縮小により、欧州の天然ガス価格は今年に入って高騰を続け、8月半ばには1メガワットあたり250ユーロと、3月の水準から約
-
気候研究者 木本 協司 地球温暖化は、たいていは「産業革命前」からの気温上昇を議論の対象にするのですが、じつはこのころは「小氷河期」にあたり、自然変動によって地球は寒かったという証拠がいくつもあります。また、長雨などの異
-
前回書いたように、英国GWPF研究所のコンスタブルは、英国の急進的な温暖化対策を毛沢東の「大躍進」になぞらえた。英国政府は「2050年CO2ゼロ」の目標を達成するためとして洋上風力の大量導入など野心的な目標を幾つも設定し
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間