今週のアップデート — エネルギー政策、意思決定の陥穽(2013年6月24日)
今週のアップデート
1)必要な情報が政治家に伝わらない — エネルギー問題、「政治主導」の弊害を振り返る
あらゆる問題で「政治主導」という言葉が使われます。しかしそれは正しいのでしょうか。鳩山政権での25%削減目標を軸に、エネルギー政策での適切な意思決定のあり方を考えた論考です。GEPRの編集者である石井孝明の寄稿です。
2)電気事業は設備を作るほど儲るのか — 総括原価方式の功罪
電力の専門家による電力料金の値決めのやり方「総括原価方式」の解説です。この方式の見直しが検討されています。提携する国際環境経済研究所(IEEI)のサイトからの転載です。
今週のリンク
1)原発、来夏に複数稼働 「第1号」伊方・川内が有力 規制委が新基準
日本経済新聞6月20日記事。原子力規制委員会が、19日に原発の新基準を発表しました。7月8日に新基準は施行される見通しです。それに基づいて、各電力会社が原発の再稼動を申請する見込みです。ただし、同委員会は、福島事故を起こした沸騰水型原子炉(BWR)では、圧力空気を抜くベントシステムの設置を要請。そのためにこの種の原発を持つ、東京、東北電力などの原発の再稼動は遅れると予想されます。
2)福島第一原発事故の放射能による死者はゼロ — 高市発言で始まった原発再稼働をめぐる情報戦
アゴラ研究所の池田信夫所長によるJBPRESSへの6月20日付の寄稿記事です。自民党の高市早苗政調会長が「福島第一原発で事故が起きたが、それによって死亡者が出ている状況ではない。最大限の安全性を確保しながら活用するしかない」との発言を朝日新聞が17日に伝え、マスコミや野党が一斉に反発。高市氏は発言を撤回して謝罪しました。この発言について、高市氏の誤解、そして反発の背景を分析しています。原発再稼動を止めようという人々が、発言に過剰反応していることを指摘しています。
日本経済新聞6月24日記事。現在稼動中の、関西電力大飯原発3、4号について、7月に施行後も当面稼動することが認められる方向です。昨年7月稼動のこれら2つの炉は、13カ月で定期点検が入るため、夏の電力需要の増加時期にも稼動できる見込みです。
読売新聞6月21日記事。福島原発事故後の原子力への批判から、原子力研究の人気が衰えているという指摘です。発電、軍事への利用について、原子力について今後、日本国民がど
のような選択をするにしても、技術基盤の衰退は懸念される問題です。
5)なぜ25%なのか–究極目標及び合理的な各国の分担に関する日本案の検討と発信
東京大学先端科学技術研究センターの山口光秀特任教授による論文。2010年の環境経済・政策学会で発表されました。温暖化問題での鳩山イニシアティブ、また鳩山氏が主張した「25%減」「2度抑制」「80%削減」の主張が、国際社会の中でどのようにつくられたのかを解説しています。今回の寄稿コラム「必要な情報が政治家に伝わらない」の関連論文です。
![This page as PDF](https://www.gepr.org/wp-content/plugins/wp-mpdf/pdf.png)
関連記事
-
自民党萩生田光一政調会長の発言が猛批判を受けています。 トリガー条項、税調で議論しないことを確認 自公国3党協議(2023年11月30日付毎日新聞) 「今こういう制度をやっているのは日本ぐらいだ。脱炭素などを考えれば、あ
-
「エネルギー資源小国の日本では、国策で開発したナトリウム冷却高速炉の技術を次代に継承して実用化させなければならない。それには高速増殖原型炉『もんじゅ』を運転して、技術力を維持しなければならない。軽水炉の運転で生ずるプルトニウムと劣化ウランを減らすためにも、ナトリウム冷却高速炉の実用化が必要だ」
-
EUの行政執行機関であるヨーロッパ委員会は7月14日、新たな包括的気候変動対策の案を発表した。これは、2030年までに温室効果ガスの排出量を1990年と比べて55%削減し、2050年までに脱炭素(=実質ゼロ、ネットゼロ)
-
地球温暖化というと、猛暑になる!など、おどろおどろしい予測が出回っている。 だがその多くは、非現実的に高いCO2排出を前提としている。 この点は以前からも指摘されていたけれども、今般、米国のピールキーらが詳しく報告したの
-
マサチューセッツ工科大学(MIT)の科学者たちによる新しい研究では、米国政府が原子力事故の際に人々が避難すること決める指標について、あまりにも保守的ではないかという考えを示している。
-
GEPRフェロー 諸葛宗男 はじめに 米国の核の傘があてにならないから、日本は核武装すべきだとの意見がある。米国トランプ大統領は、日本は米国の核の傘を当てにして大丈夫だと言いつつ日本の核武装を肯定している。国内でも核武装
-
田中 雄三 中所得国の脱炭素化障害と日本の対応 2021年5月にGHGネットゼロのロードマップを発表したIEAは、「2050年ネットゼロ エミッションへの道のりは狭く、それを維持するには、利用可能なすべてのクリーンで効率
-
共存共栄への可能性 私は再エネ派の人々とテレビ番組やシンポジウムなどで討論や対話をする機会が時々ある。原子力推進派のなかでは稀な部類であると思っている。メディアでもシンポジウムでも、再エネvs.原子力という旧態依然の構図
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間