グーグル日本法人への公開質問状

2022年01月19日 14:00
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アゴラ研究所所長

拝啓

グーグル日本法人代表 奥山真司様

当サイトの次の記事「地球温暖化って何?」は、1月13日にグーグルから広告を配信停止されました。その理由として「信頼性がなく有害な文言」が含まれると書かれています。

その意味をグーグル日本法人に問い合わせたところ「気候変動に関連して信頼できる科学的なコンセンサスと矛盾するコンテンツ」に該当するとのことですが、具体的にどこが矛盾するのかについては回答がありません。

これは昨年5月8日の「アゴラこども版」を書き直したアーカイブ記事ですが、その内容は昨年10月に発表されたIPCC第6次評価報告書とほぼ同じです。IPCCの報告書は科学的コンセンサスだと理解していますが、グーグルのコンセンサスはそれとは違うのでしょうか。

グーグルの広告ポリシーには「温暖化が進行していることを示す長期的な傾向があることを否定する主張」を禁止すると書かれていますが、温暖化が「長期的な傾向」だというのは科学的コンセンサスではありません(IPCCもそんなことは書いていない)。

「長期」の定義にもよりますが、少なくとも最近1000年をみると「中世温暖期」の世界平均気温は今とほぼ同じでした(図3)。これはIPCCのメンバー杉山大志氏も指摘することです。

長期を「20世紀以降」と解釈しても、1960年代には寒冷化の傾向がみられたので、温暖化が単調に進んだわけではありません(図4)。最近のトンガの噴火で寒冷化が予想されているように、気候変動は非常に複雑な現象であり、人間活動だけでは説明できず、それだけで止められるものでもないというのが科学的コンセンサスです。

「信頼性がなく有害」というレッテルは、言論サイトとして看過できません。配信停止の撤回を求めますが、もしこの記事に誤りがあるなら訂正します。具体的にどこが誤っているのか、ご指摘ください。

Q1. 温暖化の原因は人間の活動なんでしょうか?

東大には去年、グローバル・コモンズ・センターができて、そのダイレクターの石井菜穂子さんは図1のようなスライドで「人類が地球環境危機を起こした」といっていますが、これは変ですね。

図1(東大グローバル・コモンズ・センター)

「完新世」というのは今から1万1700年前に氷河期が終わり、人類が定住し始めた時代ですが、地球の平均気温もその時期に大きく上がっています。でも1万年前に人間の出すCO2は微々たるものだったので、この図は地球温暖化が始まった原因は人間活動ではなかったことを証明しています。その逆に、温暖化で大気中のCO2が増えたのです。

Q2. 人類は地球環境を大きく変えたんでしょうか?

図1のように産業革命以降を「人新世」と呼んで、人類が地球環境を大きく変えたと思っている人は多いのですが、最大の温室効果ガスは水蒸気です。大気中のCO2濃度は0.04%ですが、水蒸気は2%なので、温室効果の48%は水蒸気で、CO2は21%です。

図2 炭素循環

CO2の循環の中でも、人間活動で出るのは年間50億トン。大気中にあるCO2の1/15です。自然の大きなサイクルの中では人間活動はちっぽけなものですが、人間は今までの気温に順応して生活してきたので、それが急に変化すると困ります。人間が悪化させているのは人間の生活であって、地球の問題ではないのです。

Q3. 今は人類の歴史上いちばん暖かい時期でしょうか?

図3はアメリカの海洋気象庁(NOAA)がいろいろな研究のデータを集めたものですが、西暦1000年ごろは今とほぼ同じ気温で、中世温暖期と呼ばれています。この原因も明らかに人間活動ではなく、太陽活動が活発だったためと推定されています。今はそれと同じぐらい暖かくなっていますが、温暖化と寒冷化は周期的に繰り返しており、このままずっと暖かくなるとは限りません。

図3 中世温暖期(NOAA)

Q4. 温暖化は今までずっと起こってるんですか?

図4は気象庁のデータですが、北半球では1960年ごろから寒冷化の傾向がみられました。このため1970年代には「地球は寒冷化する」とか「氷河期に入る」という論文がたくさん発表されました。このように気候変動というのは当てにならないものです。

図4 寒冷化現象(気象庁)

これについてはIPCC第5次評価報告書で「先進国の工業化による大気汚染が原因だった」と説明していますが、いま中国やインドで起こっている大気汚染の効果はよくわかりません。

Q5. 気温が1.5℃上がったらどうなるんですか?

それはみなさんのおじいさんやおばあさんが知っているはずです。図5のように産業革命の時期(1900年ごろ)に比べると、東京の平均気温はすでに3℃上がったからです。でもそれに気づいている人は、ほとんどいませんね。

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図5 東京の気温上昇(産総研調べ)

3℃上昇のうち地球温暖化は0.74℃で、残り2℃以上は都市化によるヒートアイランド現象です。この原因は道路が舗装され、建物がコンクリートになって熱を吸収しなくなり、工場や自動車などの排熱が増えたためです。

どっちにしても先進国では、100年で2℃ぐらいの気温上昇は、ほとんどの人が気づかないぐらい小さな変化です。これは熱帯の発展途上国の問題なのです。

Q6. 異常気象は増えてるんですか?

NOAAの調べでは、世界中で20世紀にハリケーンなどの異常気象が増える傾向は見られませんが、図6のように雨量は増えています。

図6 世界の大雨の雨量(NOAA)

国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、今後は熱帯でサイクロンや熱波や洪水が増えると予想していますが、今のところそれほど大きく災害が増えているわけではありません。今の気温は産業革命から200年で1.1℃上がっているので、同じペースで上がるとすれば、それほど激増することはないでしょう。

Q7. 自然災害の被害は増えたんですか?

大きく減りました。EMDAT(国際災害データベース)によると、図7のように自然災害の死者は、1920年代の年間55万人から2010年代には5万人に減りました。自然災害による死者は、この100年で92%も減ったのです。これは災害が減ったからではなく、途上国の災害対策が整備されたからです。

図7 世界の自然災害の被害(EMDAT)

Q8. 温室効果ガスはCO2だけですか?

ちがいます。世界の温室効果ガスのうち、メタンは15.8%(CO2換算)を占めます。これはメタンの温室効果が、CO2の28倍と高いためです。メタンのうち最大の24%を占めるのが、消化管内発酵つまり家畜のゲップやオナラです。

図8 畜産業の温室効果

Q9. 地球温暖化で農産物の生産は減るんですか?

図9 2050年までの食糧生産の増加率(FAO)

増えます。国連農業機関(FAO)のシナリオによると、2050年の世界の食糧生産は、何もしないと今より25%増えますが、畜産から温室効果ガスの15%が出ているので、それを削減すると増加率が12%に下がります。

CO2は植物の生長に不可欠で、温暖化すると収穫は増えますが、温暖化を避けるために「サステイナブルな農業」に転換すると食糧生産は減ります。つまり食糧生産は温暖化で減るのではなく、温暖化対策で減るのです

Q10. 温暖化で確実に起こることは何ですか?

海面が上昇することです。地球の平均気温は2100年までに2℃ぐらい上がると予想されていますが、これによって海面が中央値で48cmぐらい上がるでしょう。これは毎年6mmの上昇で、満潮と干潮の差は1.5mあるので堤防で防げます。

図10(IPCC)

このように地球温暖化は、日本では大した問題ではありませんが、熱帯の途上国では大きな問題です。だからこれは開発援助の問題ですが、その方法としてCO2削減の効果は不確実性が大きく、コストが膨大なので、効率が悪いと思います。

地球温暖化は自然の問題ではなく、人間の被害をいかに減らすかという経済問題です。温暖化で人類が滅亡するわけではないので、費用対効果を考えないといけません。80年後の気温を1.5℃下げるために何百兆円もかけることは、よい子のみなさんの負担を増やすだけです。

この他にも質問があれば、アゴラサロンで受け付けます(初月無料)。

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