ナイジェリア大統領、経済成長を奪う脱炭素に反論
![](https://agora-web.jp/cms/wp-content/uploads/2021/11/iStock-1200802368-660x440.jpg)
hadynyah/iStock
先進国の「脱炭素」押し付けでアフリカの経済成長の機会を奪ってはならない。
ナイジェリア大統領のムハンマド・ブハリがニューズウィークに書いている。
例によって日本のメディアは無視を決め込んでいるので、抄訳して紹介しよう。
いま最も流行している風力発電や太陽光発電は、不安定だという欠点があります。
安定した電力が供給されなければ、アフリカを低雇用の採掘産業主導の経済から高雇用の中所得の大陸へと発展させるための工場を建設することはできません。子どもたちは、電池の光では、ろうそくの光よりも長く学ぶことができません。今日のアフリカと同様に、明日のアフリカも、不安定なエネルギー供給では発展できません。
しかし気候変動問題への対応を急ぐあまり、そして欧米の援助機関や投資家が環境に配慮していることをアピールする目的に資するため、私たちは最も信頼性の低い代替エネルギーの導入を急いでいます。
また世界的な電気自動車ラッシュの中で、前世紀の化石燃料争奪戦に代わって、新たに電池用リチウム争奪戦が始まることの危険性は、あまり知られていないようです。アフリカで大規模な鉱床が発見された場合、地政学的な安定性が損なわれる可能性があります。そうなると、大量の難民が発生するかもしれない。
私たちは、化石燃料の使用をすぐに止めようとすることが、果たして賢明なことなのかどうか、よく考えなければなりません。
まずは、よりクリーンで安定したエネルギー生産への移行から始めなければなりません。これには、CCSやバイオマス、水力発電所などの技術があります。
原子力にも投資することができます。再生可能エネルギーではありませんが、カーボンニュートラルであり、持続的な経済発展を可能にするベースロード電力を供給することができます。ナイジェリアは、アフリカで原子力発電を検討している数少ない国のひとつで、すでに研究用原子炉が稼働しています。
私たちはヨーロッパやアメリカの友人たちからも「学ぶ」ことができます。彼らは自分たちが説いたことを必ずしも実践しているわけではありません。
私たちは、アフリカでの化石燃料投資のモラトリアムを解除するよう求めます。
ナイジェリアは、石油産業の副産物であるガスフレア(=余剰ガスの燃焼)を2030年までに回収し発電に利用することを約束しています。ナイジェリアの最大の温室効果ガス排出源はこのガスフレアなのですが、投資なくしては解消できません。
その一方で、欧米では、天然ガス発電への投資にそのような制限はありません。
■
先進国は「脱炭素」と言って、アフリカが化石燃料を使って経済成長する機会を奪っている。太陽風力では産業は発展出来ない。そのくせ先進国は今なお天然ガス火力に頼っている。穏やかな文面ながら、先進国の独善、偽善への憤りが感じられる。
日本は、この呼びかけに答えて、ナイジェリアの化石燃料開発に手を貸すべきではないのか?
■
![This page as PDF](https://www.gepr.org/wp-content/plugins/wp-mpdf/pdf.png)
関連記事
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 論点⑫に「IPCCの気候モデルは過去の気温上昇を再現でき
-
杉山大志氏の2023年2月4日付アゴラ記事で、電力会社別の原子力比率と電気料金の相関が出ていました。原子力比率の高い九州電力、関西電力の電気料金が相対的に抑えられているとのことです。 この記事を読みながら、その一週間前に
-
ビューポイント 3月15日記事。福島第一原子力発電所の事故以降、原子力発電所の海外事情から、今後の日本の原子力発電について提言しています。
-
2020年10月の菅義偉首相(当時)の所信表明演説による「2050年カーボンニュートラル」宣言、ならびに2021年4月の気候サミットにおける「2030年に2013年比46%削減」目標の表明以降、「2030年半減→2050
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクであるGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
-
福島原発事故は、現場から遠く離れた場所においても、人々の心を傷つけ、社会に混乱を広げてきた。放射能について現在の日本で健康被害の可能性は極小であるにもかかわらず、不安からパニックに陥った人がいる。こうした人々は自らと家族や子供を不幸にする被害者であるが、同時に被災地に対する風評被害や差別を行う加害者になりかねない。
-
IAEA(国際原子力機関)の策定する安全基準の一つに「政府、法律および規制の安全に対する枠組み」という文書がある。タイトルからもわかるように、国の安全規制の在り方を決める重要文書で、「GSR Part1」という略称で呼ばれることもある。
-
先日、「石川和男の危機のカナリア」と言う番組で「アンモニア発電大国への道」をやっていた。これは例の「GX実行に向けた基本方針(案)参考資料」に載っている「水素・アンモニア関連事業 約7兆円〜」を後押しするための宣伝番組だ
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間