「海洋酸性化」してもサンゴ礁は適応するという朗報
CO2濃度が増加すると海洋が「酸性化」してサンゴ礁が被害を受けるという意見があり、しばしば報道されている。

Rainer von Brandis/iStock
サンゴは生き物で、貝のように殻を作って成長するが、海水中のCO2濃度が高まって酸性化してpHが低くなると、その殻の成長が妨げられる、というロジックだ。
だが、pHの低い海域というのは、自然界にも存在する。その中の1つを調査したところ、サンゴ礁は立派に育っていた、という朗報が琉球大学から発表された。
琉球大学理学部の栗原教授らの研究グループは、パラオのニッコー湾において自然状態で高水温・高CO2(低pH)環境を示す極めてユニークな海域を発見しました。
この海域の環境は将来気候変動によって起こると予測されている環境と同じであるにもかかわらず、多様なサンゴ種が健全な状態で多く生育していることが分かりました。湾の内外に生息するサンゴを移植する実験を行った結果、湾外のサンゴに比較して湾内のサンゴの方が高水温・高CO2環境に高い耐性を示すことが明らかになりました。
本研究の結果から、生物が様々な環境に対して巧みに適応・進化する能力を持っている可能性が示されました。
サンゴ礁は平たい環になった地形が多く、その内海はしばしばpHが低くなる。
21世紀末のpHは、どんなにCO2を人間が排出しても、7.8程度までしか下がらない。このニッコー湾内のpHはほぼそれに匹敵する。
それにも関わらず、サンゴ礁は豊かに育っていることが発見された。
サンゴ礁は、様々な環境に適応する、強靭な生態系であることが改めて示された形だ。
そもそも、海洋「酸性化」という言い方も、さも海水が酸っぱくなるような印象を与えるが、じつはpHは7より大きいから2100年になっても海水はアルカリ性のままだ。現時点で海水はアルカリ性だが、そのアルカリ性がやや弱くなるだけである。
こういう朗報は、大手メディアは全然報道しない。危機だ、危機だと煽る話ばかりしている。
■

関連記事
-
政府はプラスチックごみの分別を強化するよう法改正する方針だ、と日本経済新聞が報じている。ごみの分別は自治体ごとに違い、多いところでは10種類以上に分別しているが、これを「プラスチック資源」として一括回収する方針だ。分別回
-
(前回:温室効果ガス排出量の目標達成は困難③) 田中 雄三 風力・太陽光発電の出力変動対策 現状の変動対策 出力が変動する風力や太陽光発電(VRE)の割合が増大すると、電力の積極的な需給調整が必要になります。前稿③の「E
-
我が国では、脱炭素政策の柱の一つとして2035年以降の車両の電動化が謳われ、メディアでは「日本はEV化に遅れている」などといった報道が行われている。 自動車大国である米国の現状はどうなっているのか? 米国の新排出抑制基準
-
前回、環境白書の示すデータでは、豪雨が増えているとは言えない、述べたところ、いくつかコメントがあり、データや論文も寄せられた(心より感謝します)。 その中で、「気温が上昇するほど飽和水蒸気量が増加し、そのために降水量が増
-
原子力発電に関する議論が続いています。読者の皆さまが、原子力問題を考えるための材料を紹介します。
-
菅首相が昨年末にCO2を2050年までにゼロにすると宣言して以来、日本政府は「脱炭素祭り」を続けている。中心にあるのは「グリーン成長戦略」で、「経済と環境の好循環」によってグリーン成長を実現する、としている(図1)。 そ
-
NHKで流れた福島原発事故の映像、ここに使用済核燃料が保管され一時的にその溶融の危険が指摘された。
-
今年の7~8月、東京電力管内の予備率が3%ぎりぎりになる見通しで、政府は節電要請を出した。日本の発電設備は減り続けており、停電はこれから日常的になる。年配の人なら、停電になってロウソクで暮らした記憶があるだろう。あの昭和
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間