グリーン成長なんて幻想だ:過去に学ばぬ日本の末路は

sarayut/iStock
菅首相が昨年末にCO2を2050年までにゼロにすると宣言して以来、日本政府は「脱炭素祭り」を続けている。中心にあるのは「グリーン成長戦略」で、「経済と環境の好循環」によってグリーン成長を実現する、としている。
そして、「この戦略により、2030年で年額90兆円、2050年で年額190兆円程度の 経済効果が見込まれる」としている。
だけどねえ。脱炭素というのは、安価な石炭、石油、天然ガスの使用を禁止するということだ。安価な資源を使えなければ、生活が苦しくなることは、子供でも分かることだ。
じつは日本政府はほとんど同じ事を10年前から言っている。
2009年12月30日、鳩山民主党政権は、
「2020 年に、温室効果ガスを 1990 年比で25%削減するとの目標を掲げ、あらゆる政策を総動員した「チャレンジ25」の取組を推進する。」
とした。そして、これによる経済効果は50兆円、140万人の新規雇用を生むとしている。

2009年12月30日「新成長戦略(基本方針)」より
この後、現実に起きたことは何か。太陽光発電の大量導入をしたものの、中国勢に世界市場は制覇され、日本は電気料金が高騰して経済成長の重荷になっただけだった。
この2009年のグリーン成長戦略と、菅政権のグリーン成長戦略は、呆れるぐらいによく似ている。
また莫大な無駄遣いをして、日本経済の失われた30年を失われた40年に延ばしてしまうのだろうか。
■

関連記事
-
米国における電力自由化の失敗例としては、電力危機を引き起こしたカリフォルニアの事例が有名である。他方、成功例としてテキサス州があげられることがある。
-
元静岡大学工学部化学バイオ工学科 松田 智 「地球温暖化が想定を上回るスピードで進んでいる。」と言った前振りが、何の断りもなく書かれることが多くなった。筆者などの感覚では、一体何を見てそんなことが言えるのだろうと不思議に
-
前回に続いて、環境影響(impact)を取り扱っている第2部会報告を読む。 今回のテーマは食料生産。以前、要約において1つだけ観測の統計があったことを書いた。 だが、本文をいくら読み進めても、ナマの観測の統計がとにかく示
-
国際エネルギー機関の報告書「2050年実質ゼロ」が、世界的に大きく報道されている。 この報告書は11 月に英国グラスゴーで開催される国連気候会議(COP26 )に向けての段階的な戦略の一部になっている。 IEAの意図は今
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンク、GEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。 今週のアップデート 1)核燃料サイクルに未来はあるか 池田信夫アゴラ研究所所長の論考です
-
エネルギーで考えなければならない問題は、原子力だけではありません。温暖化、原発の安全管理、エネルギー供給体制など、さまざまな課題があります。
-
アゴラ研究所は、9月27日に静岡で、地元有志の協力を得て、シンポジウムを開催します。東日本大震災からの教訓、そしてエネルギー問題を語り合います。東京大学名誉教授で、「失敗学」で知られる畑村洋太郎氏、安全保障アナリストの小川和久氏などの専門家が出席。多様な観点から問題を考えます。聴講は無料、ぜひご参加ください。詳細は上記記事で。
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 IPCC報告を見ると、産業革命前(1850年より前)は、
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間