グレートバリアリーフに異状無し
崩壊しているのはサンゴでは無く温暖化の御用科学だ
グレートバリアリーフには何ら問題は見られない。地球温暖化によってサンゴ礁が失われるという「御用科学」は腐っている(rotten)――オーストラリアで長年にわたりサンゴ礁を研究してきたピーター・リッドは、新著(英文)で説得的に語っている。
![](https://agora-web.jp/cms/wp-content/uploads/2021/04/iStock-629534636.jpg)
Rainer von Brandis/iStock
1 木に竹を接いだ「危機」の図
グレートバリアリーフは地球最大の生物構造である。オーストラリアの北東海岸沖にある長さ2,300 kmにわたるサンゴ礁で、宇宙からも見える。
このグレートバリアリーフが「危機」にあるとして頻繁に引用されるのは図1(左)だ。
![](https://agora-web.jp/cms/wp-content/uploads/2021/04/01-5.png)
図1 サンゴ礁の成長率。(左):オーストラリア海洋科学研究所(AIMS)によるデータ。(右):ピーターリッドが補正したデータ。図はリッドの書籍による。
縦軸はサンゴの成長率。サンゴは年々成長するので、木のように年輪ができる。だいたい年に1cm成長するので、半径が3mぐらいなら300年ぐらいの過去のデータが取れる。
代表的な政府研究機関であるオーストラリア海洋科学研究所(AIMS)は、1990年から2005年にかけて、この成長率が年率1%で激減しているとした。理由は環境悪化のためとされた。
このペースだと2020年には図中赤丸で示したように1990年よりも30%も低くなっているはずだ。
ところが、リッドがAIMSのデータを詳しく再検討したところ、いくつもの間違いが見つかった。特に致命的だったのは、なんと、途中で使用する試料を変えたことだ。
つまり、1990年以前のデータのほとんどは、大きくて古いサンゴからの試料だった。これに対して、1990年から2005年のデータは、はるかに小さくて若いサンゴからの試料だった。
この問題を修正すると、図1(右)のようになり、図1(左)の成長率の低下は消滅した!
リッドは、この図のトレンドを見ると、おそらく、現在でも成長率は1990年と変わらないだろう、と主張している。
では実際のところはどうなのだろうか? AIMSは2005年以降調査をしていないので、この真偽は確かめようがない。
AIMSはグレートバリアリーフが危険にさらされていると主張しながら、このような基本的な観測をすらして来なかった訳だ。
2 サンゴ礁はもともと自然変動が激しい
サンゴ礁が危機にある、という報道は、たいてい、「白化」の映像とともに流される。
エルニーニョ現象が起きて海面水温が高くなると、サンゴ礁は大量に「白化」する。これはカラフルだったサンゴ礁が真っ白になってしまう現象で、映像としてはかなりインパクトがある。
しかしこの白化の後、たいていは、速やかにサンゴ礁は復活する。また白化以外にも、サイクロンなどによってもサンゴ礁は大きな打撃をうけ、面積は大幅に低下するが、やがて復活する。サンゴ礁の面積とは、もともと大きく自然変動するものなのだ。
図2は、AIMSによって測定されたグレートバリアリーフのサンゴ被覆率である。サンゴ礁といっても、砂地もあれば海藻が生えている場所もあるので、平均の被覆率は15%から20%前後である。2011年に激減しているのは、サイクロンとヒトデの食害によるもの。一時、被覆率は10%程度まで下がったが、2016年にはすっかり回復していた。
![](https://agora-web.jp/cms/wp-content/uploads/2021/04/02-5-660x397.png)
図2 グレートバリアリーフのサンゴ被覆率。データはAIMSによる。図はリッドの書籍による。
3 サンゴ礁が温暖化で崩壊しない理由
将来に地球温暖化が進むとしても、サンゴ礁が崩壊するとは考えられない、として、リッドは幾つか理由を挙げる。
- 「白化」はサンゴの死ではない
サンゴ礁を作るのは動物であるサンゴであり、それに褐虫藻が共生している。サンゴは褐虫藻に住処を提供する代わりに、光合成で得たエネルギーをもらっている(人間が牛を飼ってミルクをもらっているようなものだ)。この生態が、サンゴ礁の強靭さの秘訣になる。
「白化」とは、サンゴが褐虫藻を追い出すことで起きる。これは新しい環境に適した褐虫藻を迎え入れるための準備だ。サンゴと褐虫藻の組み合わせは無数にあり、多様な環境に適応できる。
- サンゴ礁はそもそも暑い場所を好む。
世界でもっともサンゴ礁が豊かな場所はマレーシア、インドネシア、パプアニューギニアを含む「サンゴの三角形」と呼ばれているところだ。ここは世界で最も海水温が高い海域でもある。
- サンゴは多様な水温に適応する。
サンゴの幼生はプランクトンで、海流に運ばれて、生まれた場所から1000kmも離れたところにたどり着くことも多い。そこの水温は当然生まれた場所と全然違う。それでもパートナーの褐虫藻を探し出し、そこに適応して育つのだ。
4 御用科学がまともな科学を抑圧
オーストラリア政府や御用学者は「サンゴ礁が危機にある」という言説を広めてきた。リッドは以上のような指摘を公然としたために、勤めていたジェームズクック大学の職を追われる羽目になり、法廷で闘争中である。
「きちんと観測をして、データを公開し、互いに批判する」という科学のあるべきプロセスが、「サンゴ礁は危機にある」という御用科学に歪められ、腐っている、とリッドは訴え続けている。
![This page as PDF](https://www.gepr.org/wp-content/plugins/wp-mpdf/pdf.png)
関連記事
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 IPCC報告の「政策決定者向け要約」を見ると、北極海の氷
-
国際環境経済研究所(IEEI)版 新型コロナウイルスの緊急事態宣言が7都府県に発令されてから、およそ3週間が経ちました。様々な自粛要請がなされる中、宣言の解除予定である5月を心待ちにされている方もいらっしゃると思います。
-
国家戦略室が策定した「革新的エネルギー・環境戦略」の問題を指摘する声は大きいが、その中でも、原子力政策と核燃料サイクル政策の矛盾についてが多い。これは、「原子力の長期利用がないのに再処理を継続することは、矛盾している」という指摘である。
-
9月11日記事。毎日新聞のルポで、福島復興に取り組む東電社員を伝えるシリーズ。報道では東電について批判ばかりが目立つものの、中立の立場で読み応えのある良い記事だ。
-
東洋経済オンラインに掲載された細野豪志氏の「電力危機に陥る日本「原発再稼働」の議論が必要だ」という記事は正論だが、肝心のところで間違っている。彼はこう書く。 原発の再稼働の是非を判断する権限は原子力規制委員会にある。原子
-
GEPRを運営するアゴラ研究所はドワンゴ社の提供するニコニコ生放送で「ニコ生アゴラ」という番組を月に1回提供している。6月5日の放送は「2012年の夏、果たして電力は足りるのか!? 原発再稼動問題から最新のスマートグリッド構想まで「節電の夏を乗り切る方法」について徹底検証!!」だった。
-
きのうの言論アリーナで、諸葛さんと宇佐美さんが期せずして一致したのは、東芝問題の裏には安全保障の問題があるということだ。中国はウェスティングハウス(WH)のライセンス供与を受けてAP1000を数十基建設する予定だが、これ
-
北朝鮮の国防委員会は2013年1月24日、国連安全保障理事会の制裁決議に反発して、米国を核兵器によって攻撃することを想定した「高い水準の核実験」を実施すると明言した。第三回目となる核実験。一体、高い水準とは何を意味するのだろうか。小型化、高濃縮ウラン、同時多数実験をキーワードに解読する。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間