NHKが煽る温暖化報道を統計でファクトチェック!

2021年01月18日 13:00
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

NHKスペシャル「2030 未来への分岐点 暴走する温暖化 “脱炭素”への挑戦(1月9日放映)」を見た。一部は5分のミニ動画として3本がYouTubeで公開されている:温暖化は新フェーズへ  、2100年に“待っている未来”若者たちの声で脱炭素へ!

番組ではおどろおどろしい(そしてお金の掛かっていそうな)災害の映像が次々に流れる。洪水も山火事も台風も温暖化のせいで激甚化した、地球環境はすでに壊れている、とさんざん視聴者の恐怖を煽っていた。

だけど、どこまで本当だろうか? ファクトチェックをしてみよう。

災害の事例をいくら並べ立てても「災害激甚化」の証拠とは言えない。統計を見てみよう。すると、豪雨は強くなっていないし、山火事はむしろ減っているし、台風は増えても強くなってもいない。以下でデータを確認しよう(いずれも詳しくはリンク先をご覧ください):

図1 日本の豪雨は強くなっていない。データは気象庁による。(詳しくは地球温暖化ファクトシート 第2版)

図1 日本の豪雨は強くなっていない。データは気象庁による。(詳しくは地球温暖化ファクトシート 第2版

 

図2 世界の山火事はむしろ減っている。データは欧州連合の気象機関による。山火事についてさらに詳しくは(地球温暖化ファクトシート 第2版)

図2 世界の山火事はむしろ減っている。データは欧州連合の気象機関による。山火事についてさらに詳しくは(地球温暖化ファクトシート 第2版

 

図3 台風は増えても強くなってもいない。図は気象庁による。(詳しくは地球温暖化ファクトシート 第2版)

図3 台風は増えても強くなってもいない。図は気象庁による。(詳しくは地球温暖化ファクトシート 第2版

以上のデータは全て公式かつ公開の資料で、誰でもリンクを辿って確認できる。

そもそも自然現象が激甚化などしていないのだから、「温暖化のせいで災害が激甚化した」などということも論理的に有り得ない。

同番組では「既に温暖化の悪影響が起きている、地球が壊れている、いますぐ行動しないといけない!」といって、最近欧米で流行っている若者の温暖化反対運動の学校ストライキとデモの様子を流し、日本の若者にも行動せよ!と訴えている。

だが若者は、学校をストライキする前に、勉強して統計データを読めるようになり、事実関係を確認すべきではないのか?

NHKは猛烈に反省し、まずは自分が勉強し、若者へのメッセージも改めるべきだ。

番組の最後では、アインシュタインの言葉を引用して、若者への「行動」を訴えている。それは「世界は危険でいっぱいだ。なぜなら、それは悪事を働くものがいるからというのではなく、それを見て見ぬ振りをする人たちがいるからだ」、というものだ。

だけれども、これは最早ブラックジョークにしか聞こえない。すぐ入手できるし誰にでもわかる公式統計を「見て見ぬ振り」しているのは、NHKではないのか?

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • 東京電力の福島復興本社が本年1月1日に設立された。ようやく福島原発事故の後始末に、東電自らが立ち上がった感があるが、あの事故から2年近くも経った後での体制強化であり、事故当事者の動きとしては、あまりに遅いようにも映る。
  • ハリケーン・アイダがルイジアナ州を襲ったが、16年前のハリケーン・カトリーナのような災害は起きなかった。防災投資が奏功したのだ。ウォール・ストリート・ジャーナルが社説で簡潔にまとめている。 ハリケーン・アイダは日曜日、カ
  • 昨年9月1日に北海道電力と東北電力の電力料金値上げが実施された。これで、12年からの一連の電力値上げ申請に基づく料金値上げが全て出そろったことになる。下表にまとめて示すが、認可された値上げ率は各電力会社の原発比率等の差により、家庭等が対象の規制部門で6・23%から9・75%の範囲に、また、工場やオフィスビルを対象とする自由化部門で11・0%から17・26%である。
  • 石油がまもなく枯渇するという「ピークオイル」をとなえたアメリカの地質学者ハバートは、1956年に人類のエネルギー消費を「長い夜に燃やす1本のマッチ」にたとえた。人類が化石燃料を使い始めたのは産業革命以降の200年ぐらいで
  • 四国電力の伊方原発2号機の廃炉が決まった。これは民主党政権の決めた「運転開始40年で廃炉にする」という(科学的根拠のない)ルールによるもので、新規制基準の施行後すでに6基の廃炉が決まった。残る原発は42基だが、今後10年
  • 以前紹介したスティーブン・クーニン著の「Unsettled」の待望の邦訳が出た。筆者が解説を書いたので、その一部を抜粋して紹介しよう。 スティーブン・クーニンは輝かしい経歴の持ち主で、間違いなく米国を代表する科学者の1人
  • 著者は、エネルギー問題の世界的権威である。20年以上前に書かれた『石油の世紀』は、いまだにエネルギー産業の教科書だが、本書はそれを全面的に書き直し、福島事故後の変化も取り入れた最新の入門書である。
  • 1. まえがき いま世界中が新型コロナウイルスの被害を受けている。今年の東京オリンピックも1年延期と決まった。 中国、米国、ヨーロッパの各国が入国制限や移動禁止令を出している。町から人が消え、レストランが閉店し、観光客が

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑