台風を温暖化のせいにして騒ぐより治水対策を進めるべき
「カスリーン台風の再来」から東京を守ったのは八ッ場ダム
東日本台風(=当初は令和元年台風19号と呼ばれた)に伴う豪雨は、ほぼカスリーン台風の再来だった、と日本気象学会の論文誌「天気」10月号で藤部教授が報告した。
東日本台風は死者・行方不明者85名を出し、大きな被害をもたらした。しかし特筆すべきは、カスリーン台風に比べると遥かに被害が少なく済んだことだ。
1947年のカスリーン台風は死者・行方不明者1930人を出した。利根川は決壊し、広大な面積が浸水した(図1)。
カスリーン台風以来、「その再来に備える」ということが、利根川水系での治水事業の目標だった。
今回、大規模な水害に至らなかったのは、八ッ場ダムなどの整備が奏功したからだ。(図2)
そのわりに、治水事業に当たった人々に対する感謝の声があまり聞かれないのは残念である。全員起立して一斉拍手をしたいほどだ!
対照的に、東日本台風を地球温暖化のせいにする意見はよくメディアで見られた。だがこれは全く根拠が無い。
カスリーン台風は1947年の台風であり、地球温暖化などもちろん関係なかった。
統計的に有意ではないけれども、仮に、気温が上昇すれば雨量が増えるというクラウジウス・クラペイロン関係によって大雨が増えたと想定しても、たいした増加ではない。過去100年の日本付近の気温上昇は0.73℃だったから、カスリーン台風のあった1947年から今日までの日本の気温上昇は0.53℃、これによる降水量の増加は3.7%に過ぎない。(計算については拙稿の項目4, 7, 8, 9を参照)。
メディアだけではなく、国土交通省も防災白書で「自然災害が激甚化」していると書いているが、これが誤りであることは以前書いた。
他方で、東日本台風の水害による被害額は2兆円近くに上り、統計開始以来最大の被害額となった。
だが被害額が大きいからといって、「台風災害が激甚化した」などと言うのは見当違いだ。被害額が大きくなった理由は、被害を受けやすい場所に人口や資産が増えたからである。
仮に東日本台風でカスリーン台風並みの決壊が起き、利根川上流から東京都に至って大浸水が起きたならば、被害は如何ばかりになったであろう? 想像するのも恐ろしい。
まとめ
- 治水事業はカスリーン台風の再来から東京を守った。きちんと感謝しよう!
- 台風は激甚化などしていない。台風を温暖化のせいにするのは間違いだ。
- 国土交通省は、東京を守った実績を掲げて、根拠の無い温暖化原因説で人の不安を煽るのではなく、正攻法で治水事業への支持を得るべきだ。
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