2050年CO2ゼロでも、0.01℃も下がらないし豪雨は1mmも減らない
2050年にCO2をゼロにすると宣言する自治体が増えている。これが不真面目かつ罪作りであることを前に述べた。
![(写真AC:編集部)](https://www.gepr.org/ja/cms/wp-content/uploads/2020/10/904228_s.jpg)
(写真AC:編集部)
本稿では仮に、日本全体で2050年にCO2をゼロにすると、気温は何度下がり、豪雨は何ミリ減るか計算しよう。
すると、気温は0.01℃も下がらず、豪雨は1mmも減らないことが分かる。
つまり日本が2050年までにCO2をゼロにするかどうかは、日本の防災には殆ど全く関係が無い。自治体にせよ、政府にせよ、このことをきちんと理解し、住民にも説明すべきである。それ無くして「2050年CO2ゼロ」を安易に宣言してはならない。
1 計算方法
計算方法は以前述べたが、以下におさらいをしよう。
気温上昇は、TCRE= 1.6(℃/兆トンC)という係数を使って、累積の排出量を用いて以下のように計算できる。この方法は、気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change:IPCC)報告によるものだ。
気温上昇(℃)= 1.6(℃/兆トンC)×累積CO2排出量(兆トンCO2) (1)
降水量は、気温1℃が上がると水蒸気量が増え、引いては降水量が6%増えるというクラウジウス・クラペイロン関係を用いる。
降水量増加(%) = 気温上昇(℃)×6 (%/℃) (2)
2 計算手順
式(1)(2)を用いて2050年について計算すると、表のようになる。順に説明しよう。
まずAはTCREである。TCREは1兆トンCあたりで1.6℃である。
BはCO2排出量が現状(=10億トン)から2050年まで30年間にわたり横ばいで推移したと仮定した場合の累積の排出量である。
Cは、その時の2050年における気温上昇を式(1)を用いて計算したもの。備考のところで、3.67で割っているのは、TCREがトンCあたりで定義されているので、トンCO2あたりに直すためである。CO2の分子量が44、 Cの分子量が12なので、3.67で割っている。
Dは、2050年にCO2をゼロにした場合の気温低下である。2021年から直線的にCO2をゼロにするとなると、今後30年間の平均でのCO2の排出削減量はBの半分になるから、気温低下DはCの半分になる。
Eは、式(2)を用いて、1日で500mmの豪雨の降水量が、Dの気温低下によって、どれだけ減少するかを計算したものである。
![(写真AC:編集部)](https://www.gepr.org/ja/cms/wp-content/uploads/2020/10/2297475_s.jpg)
(写真AC:編集部)
3 計算結果とその意味
表から、日本全体で2050年にCO2ゼロを達成することによる気温の低下(D)は0.0065℃であり、つまり0.01℃にもならないことが分かった。またこのときの豪雨の減少(E)は0.196mmであり、つまり1mmにもならないことが分かった。
なぜこのように僅かなのか。理由は2つある。
第1は、温暖化は緩やかな変化だからだ。過去にも温暖化は起きてきたが、同じく緩やかであった。台風、豪雨、猛暑の何れにも、殆ど温暖化の影響は無かった。
第2は、日本の排出量は世界の内で僅かだからだ。図を見ると、日本の排出は世界の3%に過ぎないことが分かる。
![(出典:資源エネルギー庁資料)](https://www.gepr.org/ja/cms/wp-content/uploads/2020/10/9f74e304089ede3fd44c03a68482f77d.png)
(出典:資源エネルギー庁資料)
![This page as PDF](https://www.gepr.org/wp-content/plugins/wp-mpdf/pdf.png)
関連記事
-
広島高裁の伊方3号機運転差止判決に対する違和感 去る12月13日、広島高等裁判所が愛媛県にある伊方原子力発電所3号機について「阿蘇山が噴火した場合の火砕流が原発に到達する可能性が小さいとは言えない」と指摘し、運転の停止を
-
日本のSDGsコンサルやESG投資の専門家の皆さんは、なぜかウイグル・チベット問題に対して触れたがりません。何年も前から折に触れて質問するのですがいつもはぐらかされます。近年で言えば香港や内モンゴルについても言及している
-
イタリアがSMRで原子力回帰 それはアカンでしょ! イタリアがメローニ首相の主導のもとに原子力に回帰する方向だという。今年5月に、下院で原発活用の動議が可決された。 世界で最初の原子炉を作ったのはイタリア出身のノーベル物
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクであるGEPRはサイトを更新しました。
-
「ドイツの電力事情3」において、再エネに対する助成が大きな国民負担となり、再生可能エネルギー法の見直しに向かっていることをお伝えした。その後ドイツ産業界および国民の我慢が限界に達していることを伺わせる事例がいくつか出てきたので紹介したい。
-
GEPRを運営するアゴラ研究所はドワンゴ社の提供するニコニコ生放送で「ニコ生アゴラ」という番組を月に1回提供している。6月5日の放送は「2012年の夏、果たして電力は足りるのか!? 原発再稼動問題から最新のスマートグリッド構想まで「節電の夏を乗り切る方法」について徹底検証!!」だった。
-
バイデン政権で気候変動特使になったジョン・ケリーが米国CBSのインタビューに答えて、先週全米を襲った寒波も地球温暖化のせいだ、と言った。「そんなバカな」という訳で、共和党系ウェブサイトであるブライトバートでバズっている。
-
原子力発電に関する議論が続いています。読者の皆さまが、原子力問題を考えるための材料を紹介します。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間