プラスチックごみはリサイクルしないで燃やせばいい
7月1日からスーパーやコンビニのレジ袋が有料化されたが、これは世界の流れに逆行している。プラスチックのレジ袋を禁止していたアメリカのカリフォルニア州は、4月からレジ袋を解禁した。「マイバッグ」を使い回すと、ウイルスに感染するおそれがあるからだ。レジ袋を禁止していた世界各国でも、解禁の動きが広がっている。
そんな時期に、わざわざレジ袋を有料化する目的は何だろうか。経済産業省のウェブサイトによると「廃棄物・資源制約、海洋プラスチックごみ問題、地球温暖化を防ぐためにプラスチックの過剰な使用を抑制」することが目的だと書いてある。
まずレジ袋をなくすと、どれぐらい資源が節約できるだろうか。日本で消費される原油のうち、プラスチックの生産に使われるのは2.7%で、レジ袋に使われるのはその2.2%、つまり原油の0.05%である。これをゼロにしても、資源の節約にはならない。
レジ袋の材料になるポリエチレンは、原油を精製する過程で出てくるナフサからつくられる。これは昔は捨てていた副産物なので、レジ袋をやめても石油の消費量は減らない。資源節約という意味では、レジ袋の有料化は無意味である。
「海がプラスチックであふれている」という話がよくあるが、海のプラスチックごみのうち、ポリ袋は図のように0.3%しかない。レジ袋を減らしたりストローを紙に変えたりしても、海洋ごみが減る効果はゼロに近いのだ。
プラスチックごみの84%は「リサイクル」されている
そもそもプラスチックごみを減らす必要があるのだろうか。昔は多くの自治体でごみを分別し、プラスチックは不燃ごみとしてリサイクルしなければならなかった。プラスチックを燃やすと高温になり、ごみ焼却炉がいたむからだ。
しかし今は、東京23区は基本的にごみの分別をしていない。空き缶は分別収集しているが、ペットボトルは燃えるごみと一緒に捨ててもかまわない。ゴミ焼却炉の性能がよくなって800℃以上の高温に耐えられるからだ。
それでは資源を再利用できないと思うかもしれないが、一般社団法人プラスチック循環利用協会の資料によると、日本のプラスチック廃棄物の84%は再利用されている。
このうち再生利用するマテリアル・リサイクルや高炉の材料にするケミカル・リサイクルの他に、サーマル・リサイクルが56%ある。これはゴミ焼却炉の廃熱で発電や温水化するもので、廃熱の90%近くがエネルギーとして回収されている。
環境団体は「国際的には熱回収はリサイクルと認められていない」というが、そんなことはどうでもいい。問題は資源が有効利用されているかどうかである。
プラスチックごみを再利用するにはリサイクル工場で粉にして合成繊維などの材料にする多くの工程が必要で、コストが高い。そういうライフサイクル全体を考えると、CO2排出量も多い。
次の図のようにマテリアル・リサイクルよりサーマル・ルリサイクルのほうがエネルギー削減効果が3倍以上高く、CO2削減効果も大きい。つまりプラスチックごみは、燃やして熱でエネルギーを回収するのがもっとも効率的で環境負荷も小さいのだ。
ごみ分別やリサイクルは資源の浪費
海洋ごみの中では、レジ袋よりペットボトルのほうが大きな問題だ。これはプラスチックごみを直接、海に捨てることが問題なので、生ごみと一緒に焼却すればいいのだ。ややこしい分別をすることで、ペットボトルの処理が困難になっている。
「プラスチックを燃やすとダイオキシンなどの有毒物質が出る」というのは昔の話で、ダイオキシンの環境リスクは無視できる。これを理由にして1990年代にプラスチックが焼却できなくなったとき、ごみを分別する習慣ができ、いまだに続いているのだ。
森下兼年氏も指摘するように、今は生ごみだけでは発電の温度が上がらないので、プラスチックごみを燃えるごみとして認めるようになり、それでも足りないので重油を助燃剤として加えている。レジ袋の有料化は、1990年代のごみ処理技術を基準にした「2周遅れ」の対策なのだ。
プラスチックごみは分解しないので永遠に残るというのも錯覚である。プラスチックは炭素と水素の化合物なので、ごみ焼却炉で燃やせばCO2と水に分解して灰になるのだ。灰になったら体積は大幅に減るので、処分場の問題も解決する。膨大な手間をかけてリサイクルするのは資源の浪費であるばかりでなく、地球環境にとっても有害である。
関連記事
-
欧州の非鉄金属産業のCEO47名は、欧州委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長、欧州議会のロベルタ・メッツォーラ議長、欧州理事会のチャールズ・ミシェル議長に宛てて、深刻化する欧州のエネルギー危機「存亡の危機」につ
-
きのうの日本記者クラブの討論会は、意外に話が噛み合っていた。議論の焦点は本命とされる河野太郎氏の政策だった。 第一は彼の提案した最低保障年金が民主党政権の時代に葬られたものだという点だが、これについての岸田氏の突っ込みは
-
米国のトランプ次期大統領が閣僚候補者を次々に指名している。エネルギーと環境に関して、その方向性ははっきりしている。 以下の、バーガム、ライト、ゼルディンの3氏は全員、石油・ガス・石炭などの化石燃料の開発・利用に関する規制
-
スマートジャパン 3月14日記事。環境省が石炭火力発電所の新設に難色を示し続けている。国のCO2排出量の削減に影響を及ぼすからだ。しかし最終的な判断を担う経済産業省は容認する姿勢で、事業者が建設計画を変更する可能性は小さい。世界の主要国が石炭火力発電の縮小に向かう中、日本政府の方針は中途半端なままである。
-
日本の原子力問題で、使用済み核燃料の処理の問題は今でも先行きが見えません。日本はその再処理を行い、量を減らして核兵器に使われるプルトニウムを持たない「核燃料サイクル政策」を進めてきました。ところが再処理は進まず、それをつかうもんじゅは稼動せず、最終処分地も決まりません。
-
国連気候変動枠組み交渉の現場に参加するのは実に2 年ぶりであったが、残念なことに、そして驚くほど議論の内容に変化は見られなかった。COP18で、京都議定書は第2約束期間を8年として、欧州連合(EU)・豪などいくつかの国が参加を表明、2020年以降の新たな枠組みについてはその交渉テキストを15年までに固めることは決定した。
-
今年7月から実施される「再生可能エネルギー全量買取制度」で、経済産業省の「調達価格等算定委員会」は太陽光発電の買取価格を「1キロワット(kw)時あたり42円」という案を出し、6月1日までパブコメが募集される。これは、最近悪名高くなった電力会社の「総括原価方式」と同様、太陽光の電力事業会社の利ザヤを保証する制度である。この買取価格が適正であれば問題ないが、そうとは言えない状況が世界の太陽電池市場で起きている。
-
原子力の論点、使用済核燃料問題についてのコラムを紹介します。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間