実績データを見れば、日本はコロナ対策の最優秀国だ
人間社会に甚大な負の負担を強いる外出禁止令や休業要請等の人的接触低減策を講ずる目的は、いうまでもなく爆発的感染拡大(すなわち「感染爆発」)の抑え込みである。したがって、その後の感染者数増大を最も低く抑えて収束させた国が、コロナ対策の最優秀国なのである。
図1に外出禁止令等の発令時点からの主要国の感染者数の増加倍率を比較して示すが、日本が(台湾を除き)コロナ対策の最優秀国であることが歴然としている。海外に比べPCR検査の数が一桁少ない日本の感染者数は過小評価だとの批判があるが、増加倍率での比較なら、そうしたバイアスは関係なくフェアな比較といえる。
図2には新規感染者数のピーク値を発令時点からの倍率で示すが、この図からも日本が最優秀国であることが歴然としている。

図1

図2
図3に、外出禁止令等の発令後の新規感染者発生数(人口10万人当たり)の推移を主要国間で比較して示した。欧米諸国では、発令日から2週間近くは新規感染者の増加が止まらず、その後に下降に転じているところが多い。米国と英国では、上昇が止まった後も、1か月間近く新規発生数が有意に下がらない状態が続いている。またスペインでは、一旦ピーク時から半分にまで減ったものの、その後停滞している。韓国は欧米と異なり、1週間程度で新規発生数の増加抑え込みに成功しており、その点は評価に値する。
図3では日本の状態がわかりにくいので、縦軸のスケールを拡大して示したのが図4で、メディアが欧州の優等生と持ちあげるドイツも、スケールを四分の一に圧縮して示した。
韓国では、確かに最初の2週間でピーク封じ込めに成功したが、10万人当たりの新規感染者数が0.2人まで落ちた後、20日間近く低下が進まない期間があった。これに比べ、我が国では発令後3日目から下降し始め、10万人当たり0.2人を割った後も今のところ順調に低下を続けており、この段階では韓国よりも下降のペースが速い。ドイツのピーク後の低下と比べても日本の低下速度は決して負けていない。この状態を今後も維持できれば、新規感染者数の低下のペースの点でも日本は最優秀国といえる。
図4には、日本の中で最も厳しい状況に置かれている東京の新規感染者数の変化も示したが、3週間を過ぎたあたりで起きた介護施設でのクラスター発生で一時的な上昇があったものの、、全体的に見れば順調な低下傾向を示している。

図3

図4
最近メディアでは、ドイツや韓国におけるPCR検査の大量実施を称賛し、彼らを見習って日本も大量実施に早く転換すべきとの議論が高まっている。
しかし、以上述べてきたように、実績をきちんと比較して見れば、実は日本のほうがより優れた状態にあることが明白である。特に図3に示した日本以外の各国はみなPCR検査大量実施国である。それにも関わらず、それらの国のほぼ半数が、外出禁止令等の発令後1ヶ月半以上を経過したにもかかわらず、いまだ新規感染者数の有効な抑え込みに成功していない。
一方で、PCR検査の実施率がこれらの国に比べ一桁小さい日本では、新規感染者数の順調な低下が続いている。こうした事実は、PCR検査の大量実施は必ずしもコロナ封じ込め対策の成功の鍵とは言えないということを物語っているのではないか。少なくとも、こうした事実を冷静に見れば、「日本もPCR大量検査を行うべし」との主張は全く説得性がない。
軽症者のPCR検査が長く待たされたり、自宅での感染回復者の陰性確認をしてもらえないなど、日本のPCR検査能力の低さの弊害が無視できないのは事実であり、早急に改善が望まれる。しかしながら上述のようなデータを見る限り、やみくもにPCR検査を増やすことの効果は大いに疑問といわざるを得ない。
仮に、コロナ封じ込めの長期安定化策として大量検査が有効ということなら、これから腰を据えて体制作りを進めればよい。少なくとも医療現場が緊迫している今、さらなる負担を強いてまで急いで進めるべきことではないように思う。
一部のメディアは、ドイツや韓国を称賛し、日本の対応を貶める報道に熱を挙げているが、事実無根の「安倍たたき」としか見えない。政府の国民生活支援や経済対策では、いろいろ問題があるので、その点を改善するための前向きの批判や提言はどんどんやっていただきたい。
しかし、少なくとも純粋に感染爆発封じ込めという点からは、日本の現在の進め方でも結果としては、海外と比べてもっともうまくいっている。日本の医療関係者の努力をもっと前向きに評価してもよいのではないか。彼らの日々の健闘に報いるためにも、ここで紹介したような事実を国民にもっときちんと、わかりやすく伝えてもらう必要がある。
関連記事
-
賛否の分かれる計画素案 本年12月17日に経産省は第7次エネルギー基本計画の素案を提示した。27日には温室効果ガス排出量を2035年までに60%、2040年までに73%(いずれも19年比)削減するとの地球温暖化基本計画が
-
2004年、ドイツの環境相だったユルゲン・トリッティン氏は、再生可能エネルギー促進のための賦課金は「月額わずか1ユーロ、アイスクリーム一個の値段だ」と語った。 しかしそれから20年経った今、皮肉な事態が起きている。ドイツ
-
今年3月11日、東日本大震災から一年を迎え、深い哀悼の意が東北の人々に寄せられた。しかしながら、今被災者が直面している更なる危機に対して何も行動が取られないのであれば、折角の哀悼の意も多くの意味を持たないことになってしまう。今現在の危機は、あの大津波とは異なり、日本に住む人々が防ぐことのできるものである。
-
6月21日記事。ドイツ在住の日系ビジネスコンサルタントの寄稿。筆者は再エネ拡充と脱原発を評価する立場のようだが、それでも多くの問題を抱えていることを指摘している。中でも電力料金の上昇と、電力配電系統の未整備の問題があるという。
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。毎週月曜日更新ですが、編集の事情で今回水曜日としたことをお詫びします。
-
三井住友FG、脱炭素の国際枠組み脱退へ 邦銀にも波及 三井住友フィナンシャルグループ(FG)が脱炭素をめざす金融機関の国際的な枠組みから脱退することが4日、わかった。野村ホールディングス(HD)も同様の検討を進めている。
-
電力自由化は、送電・配電のネットワークを共通インフラとして第三者に開放し、発電・小売部門への新規参入を促す、という形態が一般的な進め方だ。電気の発電・小売事業を行うには、送配電ネットワークの利用が不可欠であるので、規制者は、送配電ネットワークを保有する事業者に「全ての事業者に同条件で送配電ネットワーク利用を可能とすること」を義務付けるとともに、これが貫徹するよう規制を運用することとなる。これがいわゆる発送電分離である。一口に発送電分離と言ってもいくつかの形態があるが、経産省の電力システム改革専門委員会では、以下の4類型に大別している。
-
1. COP28の開催 11月30日から約2週間、UAEのドバイで開催されたCOP28には、90,000人近い関係者がプライベート・ジェットなどで駆けつけた。 11月21日のライブ「She Changes Climate
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間












