今週のアップデート — 原子力の技術継承を考える(2012年7月23日)

2012年07月23日 17:00

原子力発電に関する議論が続いています。読者の皆さまが、原子力問題を考えるための材料を紹介します。

今週のコラム

1)原子力発電への反対によって、原子力全体についての批判が広がっている現状は非常に悲しむべきことです。科学の発展も止めてしまうことになりかねません。

元電力中央研究所の研究者である常磐井守泰さんに「安全性の高い原発「高速炉」— 再評価と技術継承を考えよう」というコラムを寄稿いただきました。常磐井さんは原子力をめぐる技術調査や除染活動をするNuSACというベンチャーを経営しています。

安全性を高めた原発の高速炉があります。この原稿では、この原発の解説をしています。

2)オックスフォード大学名誉教授のウェイド・アリソン氏の「The Fukushima Accident and the NAIIC Report」を英語サイトに掲載しました。まもなく日本語訳も掲載します。国会事故調査委員会の報告を概観し、低線量被曝についての部分での疑問を示しています。

3)内閣府の「エネルギー・環境会議」は2030年前の選択肢の一つとして「原発ゼロ」を掲げています。しかし、この会議に加え、民間からも「原発ゼロ」を合理的に考える意見は登場していません。

アゴラ研究所フェローの石井孝明は「現実的な「原子力ゼロ」シナリオの検討 — 石炭・LNGシフトへの困難な道のり」を提供します。

4)GEPRはNPO国際環境経済研究所と提携し、コンテンツを相互に紹介しています。消費生活アドバイザーの丸山晴美さんのコラム「節電どこから何をすればよい?」を転載しました。暑い夏をすごし、節電をするために、情報を役立ててください。

今週のリンク

1)福島第一原発事故の健康への世界的影響(要旨)
スタンフォード大学の研究者が米学術誌「エネルギーと環境科学」に福島の影響について論文を掲載しています。ただし、その内容については、疑問があります。アゴラ研究所の池田信夫所長が、コラム「福島事故の3Dシミュレーションについて」で解説しています。

This page as PDF

関連記事

  • トランプ政権のエネルギー温暖化対策やパリ協定への対応に関し、本欄で何度か取り上げてきたが[注1]、本稿では今年に入ってからのトランプ政権の幹部人事の影響について考えて見たい。 昨年半ば、米国がパリ協定に残留するか否かが大
  • IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 IPCC報告では地球温暖化はCO2等の温室効果(とエアロ
  • ESG投資について、経産省のサイトでは、『機関投資家を中心に、企業経営の持続可能性を評価するという概念が普及し、気候変動などを念頭においた長期的なリスクマネジメントや企業の新たな収益創出の機会を評価するベンチマークとして
  • きのうの日本記者クラブの討論会は、意外に話が噛み合っていた。議論の焦点は本命とされる河野太郎氏の政策だった。 第一は彼の提案した最低保障年金が民主党政権の時代に葬られたものだという点だが、これについての岸田氏の突っ込みは
  • 菅首相が昨年11月の所信表明演説で2050年にCO2をゼロにする、脱炭素をする、と宣言して以来、日本中「脱炭素祭り」になってしまった。 日本の同調圧力というのはかくも強いものなのかと、ほとほと嫌になる。政府が首相に従うの
  • 国際エネルギー機関(IEA)は、毎年、主要国の電源別発電電力量を発表している。この2008年実績から、いくつかの主要国を抜粋してまとめたのが下の図だ。現在、日本人の多くが「できれば避けたいと思っている」であろう順に、下から、原子力、石炭、石油、天然ガス、水力、その他(風力、太陽光発電等)とした。また、“先進国”と“途上国”に分けたうえで、それぞれ原子力発電と石炭火力発電を加算し、依存度の高い順に左から並べた。
  • 報道にもあったが、核融合開発のロードマップが前倒しされたことは喜ばしい。 だが残念ながら、いま一つ腰が引けている。政府による原型炉建設へのコミットメントが足りない。 核融合開発は、いま「実験炉」段階にあり、今後2兆円をか
  • アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑