世界の原子力発電動向(上)-趨勢は継続・拡大

2015年07月13日 14:00
日本原子力産業協会

(原子力産業の分析を行っている日本原子力産業協会政策・コミュニケーション部の小林氏に、寄稿をいただいた。ただし、この文章は2014年6月時点のもの。新しい情報として、中国が輸出体制を整備、ロシアが各国と原子力協定を締結、フランスアレバ社の経営再建問題が浮上している。概観のために掲載する。)

(写真)東芝・ウェスティングハウスが建設を進める国家核電技術公司(SNTPC)管理の中国三門原子力発電所(中国・浙江省)

日本では福島第一原発事故の後で、世論調査では原子力発電所の再稼動や将来にわたる原子力発電利用についてネガティブな意見が多い。

一方、世界に目を転じると、ドイツのように原子力の段階的廃止を明確に標榜した国は少数で、多くの国が将来のエネルギー安全保障やCO2対策などから、原子力開発を推進あるいは拡大する方向にある。特に、これから原子力発電所を新規に導入しようとする国が増えているのが実態である。福島事故後を中心に世界・各国の原子力開発動向を俯瞰的に眺めてみる。

1・世界の原子力開発の推移

原子力平和利用は、1953年の国連総会におけるアイゼンハワー米大統領の「アトムズ・フォー・ピース」演説に始まる。1954年にはソ連でオブニンスク原発(6000kW、黒鉛減速炉)が、1956年には英国でコールダーホール原発(6万kW、ガス炉)が、1957年には米国でシッピングポート原発(10万kW、PWR)が、発電を開始した。これらの原子炉は、核兵器用プルトニウム生産炉や原子力潜水艦用動力炉から発展したものである。(表1「世界の資料」参照)

表1.世界の原子力発電開発の推移(流れ)

その後、原子炉は改良、大型化が進められた。1973年の第1次石油危機を契機に石油代替エネルギーとして、原子力発電が一躍脚光を浴び、1970年代は、世界中で平均年間26基の原子力発電所が新規に着工された。

しかし、1979年のスリーマイルアイランド(TMI)原発事故と1986年のチェルノブイリ原発事故により、世界の原子力開発は停滞した。

2000年代に入ると原子力開発は、ルネサンスと呼ばれるように復活しつつあった。そのような中で福島原子力事故が起きた。原子力開発が後退するとの懸念もあったが、若干のブレーキがかかった程度で、世界的には原子力開発推進の方向に動いている。

2014年1月1日現在、世界で運転中の原子力発電所は、31カ国・地域で435基、合計出力3億8000万kWである。全発電電力量に占める比率は11%程度である。

2・原子力発電の将来予測

世界の将来の原子力発電規模の予測については、国際原子力機関(IAEA)、国際エネルギー機関(IEA)及び米国エネルギー省・エネルギー情報局(DOE/EIA)などが発表している。(表2参照)

表2.世界の原子力発電規模予測

(注)低:低成長予測、高:高成長予測

IAEAは、世界全体の原子力規模が2030には現在の1.17~1.94倍になると予測しているが、実際には、その中間程度になるだろう。

長期的には、開発途上国における人口増加や電力需要増加だけでなく、気候変動対策やエネルギーの安定供給、他の燃料価格の不安定性などの理由から、原子力はエネルギーミックスの中で重要な役割を果たすと期待されている。

地域別に原子力開発を見ると、原子力の増加が著しいのは、中国、韓国を含む東アジア地域である。IAEA予測でも、東アジア地域は2012年末の0.83億kWから2030年には1.47億~2.68億kWに拡大する。次いで、ロシアを含む旧ソ連・東欧諸国や中東・南アジア地域(インドを含む)も強い成長ポテンシャルをもっている。(表3)

表3.IAEA:世界の原子力発電規模予測の推移(地域別)

西欧や北米地域は一部の脱原子力国やシェールガス革命の影響、寿命を迎えた原子力発電所の退役などにより、今後の原子力規模については、若干減少から若干増加までの幅があり、各国の状況によって流動的である。

表4.世界の電源別発電設備と発電電力量見通し(WEO 2013, 新政策シナリオ)
表5.世界の地域別発電設備(全体と原子力)(WEO 2013, 新政策シナリオ)

「(下)途上国に売り込む中露」へ続く。

(2015年7月13日掲載)

This page as PDF

関連記事

  • 日本の温室効果ガス排出量が増加している。環境省が4月14日に発表した確報値では、2013 年度の我が国の温室効果ガスの総排出量は、14 億 800 万トン(CO2換算)となり、前年度比+1.2%、2005年度比+0.8%、1990年度比では+10.8%となる。1990年度以降で最多だった2007年度(14億1200万トン)に次ぐ、過去2番目の排出量とあって報道機関の多くがこのニュースを報じた。しかし問題の本質に正面から向き合う記事は殆ど見られない。
  • 日本経済新聞
    5月2日 日本経済新聞。経済産業省は発電の際に二酸化炭素(CO2)を排出しないゼロエミッション電源の普及を本格化する。一定規模の電力小売りの企業に対し、2030年度に供給電力の44%をゼロエミッションにするよう義務付け、達成に向けた中間目標も設ける。
  • 2月25日にFIT法を改正する内容を含む「強靭かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」が閣議決定された。 条文を読み込んだところ、前々からアナウンスされていたように今回の法改正案の
  • アゴラ研究所は12月8日にシンポジウム「第2回アゴラ・シンポジウム --「持続可能なエネルギー戦略を考える」を開催する。(内容と申し込みはこちら)視聴はインターネット放送などで同時公開の予定だ。
  • 世の中には「電力自由化」がいいことだと思っている人がいるようだ。企業の規制をなくす自由化は、一般論としては望ましいが、民主党政権のもとで経産省がやった電力自由化は最悪の部類に入る。自由化の最大の目的は電気代を下げることだ
  • 先週の「言論アリーナ」は、竹内純子さんにエネルギー産業の長期ビジョンの話をうかがった。電力会社は原発再稼動など目の前の問題で精一杯だが、2050年に電力産業がどうなっているかという「長期均衡」から逆算すると、別のストーリ
  • 米軍のイラク爆撃で、中東情勢が不安定になってきた。ホルムズ海峡が封鎖されると原油供給の80%が止まるが、日本のエネルギー供給はいまだにほとんどの原発が動かない「片肺」状態で大丈夫なのだろうか。 エネルギーは「正義」の問題
  • 原子力規制委員会が安全の認定を厳しくしている。もし仮に活断層が存在し、それによって原発の運用上危険があるならば、いくつかの原子炉の廃炉は検討することになるだろう。しかし敦賀2号機については、運営事業者の日本原電は活断層ではないと主張している。本当に科学的に妥当なのか、慎重に審査すべきではないだろうか。また今の政治状況では難しいかもしれないが、これを機会に古い原発を新しいものにするリプレイスを考えてもよいだろう。安全で効率の高い運用のためだ。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑