今週のアップデート — 中西準子博士に学ぶ、放射能とリスク(2014年7月14日)
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
今週のアップデート
1) 福島除染、年5mSv目標を新提案・中西準子氏【言論アリーナ・本記】
2) 除染目標は年5mSvに=中西・池田対談【言論アリーナ要旨(上)】
3) 「絶対反対」の政治運動に疑問=中西・池田対談【言論アリーナ要旨(中)】
4) 除染対策でコストと効果の分析を=中西・池田対談【言論アリーナ要旨(下)】
5) 映像「放射線のリスクを科学的に考える–反公害運動50年の歴史から」
福島原発事故の後始末で、住民被ばく量で年1mSv(ミリシーベルト)までの除染を目標にしたために、手間と時間がかかり、福島県東部の住民の帰還が遅れています。この問題に取り組む、日本の環境リスク研究の第一人者である中西準子博士(産業技術総合研究所フェロー)にアゴラ研究所の運営するネット放送、言論アリーナに出演いただきました。池田信夫アゴラ研究所所長との対談の報告です。
中西氏は日本の環境リスク研究を1970年ごろから先駆的に行い、科学者の立場から環境保護活動に向き合ってきました。その提案が日本の下水道政策や、化学物質管理政策に大きな影響を与えてきました。現在は福島の除染、放射線防護問題に取り組んでいます。
除染目標5mSvという新提案、そしてリスク分析の解説など、中西さんの知恵は、放射線問題、そして環境・エネルギー問題を考える際に、大変参考になります。ぜひ、ご一読ください。
今週のリンク
池田信夫アゴラ研究所所長。中西準子氏の最新刊の書評です。リスクを確率で分析するという、本の主張の主要部分を紹介しています。
環境問題の解説で著名な安井至東大名誉教授のブログ「市民のための環境学ガイド」。今回の番組で説明の少なかった、日本政府の被ばく線量の評価が、実効値よりかなり高くなっているという問題について、中西氏の見解を解説しています。
産経新聞7月13日記事。九州電力川内原発の1、2号機が、原子力規制委員会による新安全基準の適合性審査が了承される方向になりました。16日に判定がくだり、再稼動に向け、一歩進むことになります。ただし、地元住民などとの折衝の問題が残ります。
読売新聞7月14日記事。13日に投開票の滋賀県知事選挙で、与党の自民、公明両党推薦の小鑓隆史氏が前民主党衆院議員の三日月大造氏に敗れました。三日月氏は、卒原発を掲げた嘉田由紀子知事の継承を訴え、原発も強調したものの、主要な論点ではありませんでした。しかし、この選挙を軸に、原子力問題が再び政治問題として注目を浴びる可能性があります。
日本経済新聞7月13日記事。米国のモニツ・エネルギー省長官のインタビューです。これまで米国が原則輸出していなかった天然ガスについて、輸出解禁の可能性を示唆。一方、原発の重要性も強調しています。既存の政策の確認として、参考になる記事です。

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(GEPR編集部より)この論文は、日本学術会議の機関誌『学術の動向 2014年7月号』の特集「社会が受け入れられるリスクとは何か」から転載をさせていただいた。許可をいただいた中西準子氏、同誌編集部に感謝を申し上げる。1.リスク受容の課題ここで述べるリスク受容の課題は、筆者がリスク評価研究を始めた時からのもので、むしろその課題があるからこそ、リスク評価の体系を作る必要を感じ研究を始めた筆者にとって、ここ20年間くらいの中心的課題である。
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低レベルあるいは中レベルの放射線量、および線量率に害はない。しかし、福島で起こったような事故を誤解することによる市民の健康への影響は、個人にとって、社会そして経済全体にとって危険なものである。放出された放射能によって健康被害がつきつけられるという認識は、過度に慎重な国際的「安全」基準によって強調されてきた。結果的に安心がなくなり、恐怖が広がったことは、人間生活における放射線の物理的影響とは関係がない。最近の国会事故調査委員会(以下事故調)の報告書に述べられている見解に反することだが、これは単に同調査委員会の示した「日本独自の問題」というものではなく、重要な国際的問題であるのだ。
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